働き方の変容を促すデジタルテクノロジーの進化

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)の拡大以降、人々の生活や働き方に大きな変化が起きました。そうした変化が一過性で終わらないと認識されると、「新たな常態・常識」を意味する「ニューノーマル」というキーワードで、社会の変容が語られるようになりました。その変容の底流にはテクノロジーの進化があります。

ニューノーマルのイメージ

本記事では、ニューノーマル時代における変容、その中でも特に働き方の変容を促しているデジタルテクノロジーの進化についてレポートします。

コロナ禍がもたらした急激な変容

感染症拡大防止のため人と人との接触を極力減らすことが求められ、そうした制約下でも社会生活を可能にするデジタルサービスへの需要が高まりました。フードデリバリー、オンラインライブ、オンライン授業、オンラインフィットネス、そしてテレワーク(リモートワーク)などです。技術的にはコロナ前から可能だったものが多いのですが、コロナ禍がなければ数年以上かかったかもしれない変化が半年から1年の間に一気に進みました。

そうした変化の中でも特筆すべきなのが、テレワークの拡大でしょう。感染リスクを避けながらも経済を回していくことが求められ、企業も従業員も試行錯誤を重ねつつ、テレワークに取り組みました。

テレワークのイメージ

テレワークのためのITツール

テレワークを実現するITツールには様々な種類があり、それらは「Web会議システム」、「グループウェア」、「ビジネスチャット」、「オンラインストレージ」、「リモートアクセス」、「電子契約/電子署名」などに分類されます。オフラインと同等以上の質の仕事をするにはいずれも必要なツールですが、ベースになるのは、外出先や自宅などから社内の業務システムやデータにアクセスできるリモートアクセスでしょう。

リモートアクセスには、社内のPCに外部からアクセスするリモートデスクトップ、インターネット上に仮想的な専用線を設けてセキュアにデータをやり取りするVPN(Virtual Private Network)、クライアントPCのデスクトップ環境をサーバー上で稼働させるVDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ基盤)の3つが主な方式としてあります。安全性、快適性、コストなどに違いがあり、企業の必要性などに応じて方式を選択します。

使い勝手とセキュリティを両立させるIT環境

IT専門企業やごく一部の先進企業を除くと、コロナ前にはテレワーク環境が整っていなかったので、短期間で導入できるシステムを選び、大急ぎで環境を整えた企業も多かったようです。しかし、そのためにセキュリティ対策が後手に回ったり、通信帯域の逼迫による速度の低下で業務に支障をきたしたりするケースも少なからず発生しました。

特にVPNの場合、トラフィックの集中によってレスポンスの低下や遅延が発生し、多くの企業で問題視されました。VPN設備を増強したくても手配に時間がかかってすぐには対応できず、ユーザーである従業員には大きなストレスとなりました。また、自社でVPNを運用・保守するにはそれらに精通した技術者を抱えなければならず、IT部門の負担は小さくありません。

そこで目が向けられるのが、ユーザー企業が自社でサーバーを用意する必要がなく、柔軟に利用規模を拡張・縮小できて、運用管理もベンダーに任せられるクラウド型のVDIです。マイクロソフト社の「Azure Virtual Desktop(AVD)」が、その代表的なものです。

AVDは、スモールスタートできるといったクラウド型VDI共通の特徴に加え、既にWindowsやWindows 10の包括ライセンスを保有していれば追加のライセンスが不要でコスト面でもメリットがあります。VPNによるテレワーク環境を改善したいという企業のニーズに対して、情報漏洩リスク(個人端末へのデータ保存)や帯域逼迫(レスポンス遅延)等の課題を解決し、安心・安全・快適なテレワーク環境を実現します。

DaaSのイメージ

次世代セキュリティモデル「ゼロトラスト」

セキュリティの面では、リモートアクセスの新しい形として「ゼロトラスト」が注目されています。次世代セキュリティモデルの概念としてコロナ前から存在していましたが、VPNの欠点を補うものとして存在感を高めました。

VPNは、いわば仮想の専用線であり、職場と自宅など異なる環境間で安全な通信経路を構築します。しかし、通信経路外でのセキュリティリスクに対して安全性を保証しているわけではありません。ログイン情報を適切に管理できなければ不正アクセスを許してしまい、一度侵入を許すと広範囲に影響が出るリスクを抱えています。もっともこれはVPN固有の欠点ではなく、一度社内ネットワーク内に接続できれば、いろいろな社内システムにアクセスできる仕組みに共通の課題です。

そうした課題に対して考えられたのがゼロトラストです。ゼロトラストは、「全てのアクセスを信頼しない」との考えのもと、過去の認証を信用せず、毎回のアクセスに認証を求めます。それにより、不正アクセスの侵入リスクを大幅に軽減させます。テレワークに限らず、企業システムのクラウドシフトが進む中で、ゼロトラストのセキュリティモデルが支持を増やしています。

在宅勤務だけでなく、ワーケーションも

コロナ禍を受けてテレワークの活用が広がり、デジタルツールの普及もあって、人々の間に「働く場所にはこだわらない」という考えも広がりつつあります。一方で、コロナ禍によって観光に大きな打撃を受けた自治体などでは、仕事と休暇を組み合わせた「ワーケーション」の誘致が、観光再生や地域経済活性化の施策として熱を帯びています。それらが相まって、ワーケーションが少しずつ動き出しています。

PCを着替えとともにバッグに詰めて都会を離れ、海の見える場所に宿を取り、週に数日は働き、数日は余暇を過ごし、地域の人々と交流する中で双方に良い刺激が生まれるような、そんな時間の使い方も、今のデジタルテクノロジーは可能にしています。

ワーケーションのイメージ

一覧に戻る

関連コンテンツ