ワーケーションと地方創生へのCACの取り組み

新しい働き方・休み方として「ワーケーション」が注目を集めています。

特に新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に、2021年3月には厚生労働省による「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」で、ワーケーションもテレワークの一形態として分類され、「ニューノーマル」における新しい働き方の1つとして位置付けられました。また、各省庁や地方自治体からは地方創生実現につながる動きとして期待を集めています。

こちらでは、ワーケーションと地方創生、そしてCACの取り組みについてレポートします。

ワーケーションとは

ワーケーションのイメージ

ワーケーションとは、ワーク(Work)とバケーション(Vacation)を組み合わせた造語です。テレワークなどを活用して、リゾート地や観光地など普段の職場とは異なる場所で余暇を楽しみながら仕事を行うことを言います。新しい働き方・休み方として近年注目されています。

ワーケーションには、休暇主体と業務主体の2つのパターンがあり、業務主体は実施内容や場所によって分けられます。また、ワーケーションと同じように休暇と仕事を組み合わせたものとして、ブレジャー(ビジネス(Business)とレジャー(Leisure)を組み合わせた造語)もありますが、本稿ではワーケーションを主に取り上げます。

ワーケーション 休暇型 福利厚生型 有給休暇を活用してリゾートや観光地等でテレワークを行う
業務型 地域課題解決型 地域関係者との交流を通じて、地域課題の解決策を共に考える
合宿型 場所を変え、職場のメンバーと議論を交わす
サテライトオフィス型 サテライトオフィスやシェアオフィスでの勤務
ブレジャー 業務型 出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむ

ワーケーションとブレジャーの実施形態(出典:観光庁「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー」から作成)

ワーケーションのメリット、課題

ワーケーションを導入するメリットとして、企業側には「有給休暇の取得促進」「帰属意識の向上」「人材流出の抑止と人材の確保」などがあげられ、さらに「イノベーションの創出」も期待されています。また、従業員側のメリットとしては、「働き方の選択肢の増加」「ストレス軽減やリフレッシュ効果」「モチベーションの向上」「業務効率の向上」などがあげられます。

国土交通省が行った令和2年度のテレワーク人口実態調査によると、調査対象の雇用型就業者のうち、今後ワーケーションをしてみたいと回答した人は合計で約37%と高い割合に上ります。また、ワーケーション実施にあたっての不安・課題は、「会社の制度上、ワーケーションを行うことが認められていない」が51.2%と最も多くなっています。

今後のワーケーションの実施意向(出典:国土交通省「令和2年度 テレワーク人口実態調査」)
今後のワーケーションの実施意向(出典:国土交通省「令和2年度 テレワーク人口実態調査」から作成)

また、『月刊総務』の調査によると、ワーケーションを「よく理解している」(22.5%)、「なんとなく理解している」(55.1%)と合わせて77%以上が何等か理解をしているのに対して、ワーケーションの導入についての回答は、「導入している」(3.5%)と「導入を検討している」(8.8%)を合わせても10数%にとどまっています。

同調査の「ワーケーションの導入で不安なこと」としては、「ルールや公平さを保てるかどうか」「公私の区別。労働時間の管理」などがあげられ、「ワーケーションの導入に踏み出せない理由」との質問には、「経営者への説得が困難」「製造業なので職種によっては事実上運用できない職場があり、職種間で不公平感が生じてしまうと考える」「セキュリティリスクの問題がある」「テレワークもおぼつかない状況のため」との回答があげられています。

これらの調査結果から、企業、従業員ともに様々なメリットがあるワーケーションですが、実際に導入や利用が進むには、まだ克服するべき課題が多くあることがみて取れます。

こうした不安や課題のうち、「職種」「労働時間の管理」などは、ワーケーション以外のテレワーク(例.在宅勤務など)の実践と同様に慎重な検討や自律的な運用が必要になります。

一方で、セキュリティを担保してテレワーク可能な環境を構築することは、近年のデジタルテクノロジーの進歩とその活用により、容易になってきています。こうした働き方の課題をデジタルテクノロジーで克服して従業員の様々な働き方を実現し、業務効率化や生産性向上を目指す考え方は「デジタルワークプレイス」と呼ばれています。

ワーケーションがにわかに注目を集めるようになった背景には、「デジタルワークプレイス」の実現がより現実的になったデジタルテクノロジーの進展がある、とも言えるでしょう。

ワーケーションと地方創生

ワーケーションは、企業とその従業員を受け入れる側である地方自治体からも地方創生につながる動きとして期待を集めています。

自治体側のメリットとしては、関連事業の活性化や雇用の創出、企業との関係性の構築などがあるとともに、特に少子化が深刻な地域では都市との交流人口を増やす機会としても期待されています。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大によるインバウンドの減少を背景に、平日の旅行需要の創出も地域がワーケーションに期待を寄せる理由の1つです。

2019年11月には、ワーケーションを受け入れる側の自治体が集まり、ワーケーションの全国的な普及・促進を図るため「ワーケーション自治体協議会(WAJ)」が設立されました。設立時に65自治体(1道6県58市町村)だった会員数は、2021年には179自治体(1道21県157市町村、2021年4月2日時点)へと増加しています。

こうした動きに対して、地方創生実現のために各省庁も交付金などの支援を行っています。

CACのワーケーションへの取り組み

CACはテレワーク環境の整備への取り組みを2011年から始め、2020年7月に在宅勤務制度の正式運用を開始、さらに2021年5月にはフレックスタイム制導入を決定するなど、「時間と場所にとらわれない働き方」の実現に向けた施策を行っています。

CACでは、そうした施策の一環として、現在ワーケーション導入の検討を進めています。

ワーケーション導入の目的としては、休暇と組み合わせ可能な働き方の環境等を用意することによる「従業員エンゲージメントの向上」に加えて、「地域振興への貢献」も重要と位置付けています。

CACは2019年に長崎県に拠点を開設して以来、地域の皆さんと親交を深めるにつれ、地域が抱える課題や悩みをお聞きする機会も増えてきました。そうした地域の課題等を最新のテクノロジーや当社の人材の活用により、解決のお手伝いができるのではないかと考えています。ワーケーション導入は、CACが地域の一員としての役割を担い、地方創生に貢献する大きな可能性を秘めています。

ワーケーションの中でも比較的導入が容易な休暇型ワーケーションの合宿形式での実施や、ワーケーションへの参加希望社員の募集などから検討を始めています。

[参考文献]

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