進化するBPOを有効活用するには

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)というと、会社のある業務そのものを社外に委託すること、といった程度の理解はしていても、その業務を社内人材で行う場合と比べてどんな違いがあるのか、留意点は何かといったことまではイメージがない、という方は多いと思います。本記事はそのような方々に向けて、実際にBPOサービスを提供している株式会社シーエーシー(CAC)の経験も踏まえて、BPOの概要やメリット、また導入時のポイントなどについてご紹介します。

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)とは

BPOはBusiness Process Outsourcingの略で、経理、人事、顧客対応(コールセンターなど)などといった、自社の業務プロセスを外部企業に委託することを指します。また、発注企業からの委託を受けてそうした業務を遂行するのがBPOサービスです。

間接業務あるいはバックオフィス業務と呼ばれる業務の委託のイメージが強いと思いますが、実際にはもっと広い領域で活用されています。ただし、法務、税務、ビルメンテナンスなどのように従来から外部への委託が一般的な業務は、多くの場合、BPOの対象として扱われていません。また、情報システムの運用業務を対象に含める場合もありますが、IT サービス事業者の多くは、システム運用の代行をIT アウトソーシングなどと呼び、BPOとは別扱いにしています。

なお、人材派遣の受け入れは、外部リソースの活用という点ではBPOと同じ面がありますが、BPOでは予め取り決められた成果物にサービス事業者が責任を持ち、また業務に携わる人材の勤怠管理や教育を利用会社が行う必要がないなど、利用趣旨やメリット・デメリットに違いがあります。

BPO利用のメリット

BPOの利用には、次のようなメリットがあります。

(1)専門の知識とスキルの活用により業務の質が向上する

BPO事業者には、それぞれ得意な業務分野があり、その分野に精通したプロフェッショナルがいます。そのもとで専門的な知識やスキルを持ったスタッフが業務を担当するため、業務の質を向上させることができます。法制度改正への対応もスピーディに行うことが期待できます。

(2)業務の可視化と標準化が図れる

BPO事業者は、多くの顧客に均質なサービスを提供できるよう、業務プロセスを定義・標準化しています。また、カスタマイズしたサービスを提供する場合も、現状の業務プロセス、処理量、工数、手順、品質要求レベルなどを調査して可視化した上で、非効率な点を見直し、業務プロセスの最適化を図ります。日本では、業務プロセスの明文化が不十分でノウハウも属人化しているケースが少なくありませんが、BPOサービスの利用を機に、業務の可視化と標準化を図ることが可能です。

(3)コア業務の強化に集中できる

BPOの活用により、自社のコア業務に人的リソースを集中させることができます。また、BPOによってコスト削減が実現すれば、より多くの経営資源をコア業務に投入し、競争力強化につなげることが可能になります。

(4)採用や教育の負荷を軽減できる

日本では新卒社員に即戦力は期待し難く、また労働市場の流動性が低いため専門人材の採用も容易ではありません。BPOであれば、人材の確保や教育などのタスクはBPO事業者が対応するため、利用企業の負荷が軽減されます。

BPOの対象となる業務

BPOの対象となる業務には次のようなものがあります。近年は、デジタルマーケティングなど、デジタルテクノロジーの進化ともに拡大している業務も対象に加わっています。

人事 人事情報管理、社会保険処理、給与計算、年末調整、勤怠処理など
福利厚生 財形貯蓄、団体保険、持株会、自己啓発など福利厚生プログラムの管理
総務 備品管理、文書管理など
経理 記帳・仕訳、売掛金・買掛金管理、経費精算、決算業務など
購買・調達 サプライヤーの情報収集、見積り取得・価格交渉、発注処理など
コールセンター <インバウンド>受注・予約受付、問合せ対応、操作説明、お客様相談など
<アウトバウンド>来場・来店促進、アポイント獲得、アンケートなど
フルフィルメント ECにおける在庫管理・注文処理・ピッキング・梱包・発送・決済などの包括的な代行
営業 フィールド営業や非対面営業(電話/メール)の代行
マーケティング マーケティング・アナリティクス、コンテンツ管理、キャンペーン管理、カスタマー・エクスペリエンス管理など

BPO導入のポイント

BPOへの移行は、「どこまでの業務をアウトソースするか」という委託範囲の検討とその後の業務設計が最も重要なポイントです。委託範囲は、具体的には、ヒアリングなどによる業務の概要の把握、現状のコストの推計、対象業務の候補選定、BPO移行後のコスト削減効果の試算などを通じて検討します。

その後、重複の排除など業務プロセスの整理を行った上で、業務フロー図や業務手順書の作成を通じて標準業務プロセスを定義します。日本の企業では手順やルールがドキュメント化されずに行われている業務が少なくないため、この段階できちんと業務プロセスの定義を行うことも重要なポイントです。

続いて、業務手順書に沿った業務訓練の実施を行いますが、委託企業の担当者が十分に時間を割けずに細部まで実施できなかった場合、BPO開始後に問題に気づくことになります。したがって、業務手順書の完成度や業務訓練の実施方法などについて、利用企業とBPOサービス提供者の間で認識を共通にしておくことも重要です。

なお、日本では、自社で行っていたのと同じ内容や手続きのまま業務を行うことを求め、BPO事業者のサービス仕様に基づく変更に消極的な会社が少なからずあります。そういう形で業務を請け負える事業者の能力も軽視すべきではありませんが、BPOは本来、業務の効率化や最適化の手段なので、BPO事業者の業務分析および設計力やベストプラクティスを有効活用するのが、結果的には得策となるでしょう。

BPO事業者選定のポイント

様々な事業者によりBPOサービスが提供されていますが、その中から安心して委託できるBPO事業者を選定するには、次のポイントを考慮しながら検討することが大切です。

  • その業務分野での実績は十分か
  • セキュリティ対策、個人情報保護対策、事業継続体制は整っているか
  • サービスレベルは要求水準を満たすか
  • 適正なコストであるか
  • 資本力は十分か
  • 委託業務の量に対応できる組織力があるか
  • 時代にあった技術を取り入れるべく投資をしているか

一時的な繁閑の調整のための委託ではなく、会社のある機能を一括して外部委託した場合は、再度内製化するには相当の手間と時間が必要になるため、上記以外にも、コンプライアンス上のリスクまで見極める必要があります。また、事業者の企業風土など、指数化できない部分も考慮したほうがよいでしょう。委託する際には委託先の事業所見学など、可能な限り直接見聞きし、そこで感じたことも重要な判断基準になるでしょう。

その上で、ともに将来像を描けるビジネスパートナーとしてBPO事業者を選定し、協力して業務の改革・改善に取り組んでいくことが望まれます。

BPOの未来

デジタル革命についてここでは詳述しませんが、AIなどデジタルテクノロジーの進化を注視し、あるいは実感している企業は多いことでしょう。BPOの世界でも人が行っていた作業をITに置き換える議論が盛んになってきています。

そのひとつが、BPOへのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用です。人手で行っていた作業をRPAに置き換えられれば、ヒューマンエラーが排除され、手戻りやトラブルが抑制されます。また、RPA事業者内で人員の交代を行う際の引き継ぎにかかる時間を減らせるなどのメリットもあります。

また、クラウド上でシステムとオペレーションを提供するBPaaS(Business Process as a Service)も注目を集めています。BPaaSを活用するには、自社の業務プロセスを見直し、BPaaS側に合わせていく必要があるため、日本での普及には時間がかかると見られますが、様々な業務システムにおいてクラウドへの移行が進展していることから、システムと業務プロセスをセットにしてアウトソースする動きも、徐々に進むと考えられます。

ここまでお読みになった方は、BPOとITの親和性が高いことに気付かれたと思います。実は、世界の主要なITサービスプロバイダーの多くは、BPOサービスも手掛けています。テクノロジーの進化とともにBPOの対象業務が広がり、また高度化もしているのには、そうしたことも関係しています。

このように、デジタルテクノロジーがBPOを進化させつつあります。ただし、テクノロジーに偏重して人の役割を軽視してしまうのは上策とは言えません。新たなテクノロジーを導入しながらより創造的で付加価値の高い仕事をしていくのが、これからの人の働き方だと考えられます。そのような働き方と、それを是とし力とする組織の実現に、進化を続けるBPOが貢献できるはずです。

本稿をお読みになり、BPOの有効活用を少しでもイメージして頂けたなら幸いです。

<参考>
CACの人事給与BPOサービス「C*HRs」

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